「あぁ、それにしても金が欲しい!!」
人一倍お金への執着が強かった少年時代。
恵まれた環境に育ちながらも、
家族一人だけ性質が違ったというのも不思議なものである。
ある程度豊かに育てられた記憶もあるが、
なぜ兄弟で私だけが道を踏み外してしまったのか。
「同じ環境に育って・・・」
という表現がよくあるが、
私もそれに大いに当てはまっていたような気がする。
両親ともにカタブツで、
酒はおろかギャンブルとは一切無縁。
箱入り息子と箱入り娘である。
二人とも学業に熱心で、
成績も優秀。
普通にくればその息子の将来に否が応にも
期待が集まる。
しかし両親の期待もむなしく、
その息子は小学校の時の七夕の短冊に
『お金が欲しい』
と書き込むような少年になってしまった・・・・・。
まったくもって不思議なものである。
そこからさらに月日を重ね、
私は中学3年生になっていた。
同級生から麻雀で金を巻き上げるだけでは飽き足らず、
なんと競馬にまで手を染めるようになっていった。
家族はおろか、
親戚にも競馬をやる人などおらず、
一体なんの影響で始めることになったのか
今でも不思議である。
人間どこから性根が腐るのか、
本当に今思っても不思議でならない。
「メジロブライトとシルクジャスティスの一騎打ちで決まり。」
そう前評判が非常に強かった天皇賞・春が私の馬券デビューとなった。
その年の天皇賞は、
メジロブライトとシルクジャスティスの馬連(1着と2着にくれば当たり!)が
一番人気で、その倍率がなんと
1.1~1.2倍というオッズ!!
このメジロとシルクの馬連に
『1億』賭けた人もリアルにいたらしい。
(どちらか片方でも3着以下になったら
全額没収という恐ろしい買い方だ!!)
予想もほとんどの競馬新聞が
この2頭の一騎打ちとにらんでいた。
しかし私の予想は
メジロとステイゴールドの1点買い。
その理由は、
「2強対決は2強で決着することはほとんどない」
という誰かさんの噂を信じたことから、
好きだったメジロは本命の◎にし、
ジンクスがあるからシルクは無印、
といった感じだった。
対抗の○にしたステイゴールドは、
3000mの菊花賞で面白い足を使っていたことと、
ガレていた体重がかなり戻っていることから。
なけなしのお金をはたいて
馬連の1点勝負。(1000円。)
ビギナーズラックというやつだろうか?
(今にして思えばだが・・・)
なんとドンピシャで的中!!
1000円が一瞬にして3万6000円くらいに
なった記憶がある。
中学生にとって3万6000円というのは
相当な大金である。
大人の感覚でいうと50万くらいだろうか・・・
(これはなんて美味しい!!)
当時はこう思った。
転落人生の始まりである。