会社を退職すると、一定の条件を満たせば国から失業手当(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。
この失業手当は「会社都合退職」の場合は申請後7日間の待機期間が終わればすぐに支給されますが、「自己都合退職」の場合は支給までに1か月の「給付制限期間」を経ないと支給されません。
しかし退職理由の如何を問わず、「今すぐに失業手当を支給して欲しい!」という人は多いはず。そこで自己都合退職者がすぐに失業者手当を受け取るための要件や方法について紹介してみます。
失業手当を自己都合でもすぐもらう方法
それでは早速、自己都合退職者でも退職後すぐに失業手当を受け取る方法について見ていきましょう。
結論から先に書くと、自己都合退職でも失業手当をすぐに受け取るためには「ハローワークで『特定受給資格者』または『特定理由離職者』の認定を受ける」必要があります。
「特定受給資格者・特定理由離職者」とは?
失業保険の制度では、退職者は「一般離職者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに分類されますが、それぞれ簡単に説明すると以下のようになります。
- 一般離職者:自己都合退職者
- 特定受給資格者:会社都合退職者、および自己都合退職者のうち「特定の理由」に該当する者
- 特定理由離職者:一般離職者(自己都合退職者)のうち、離職理由が「特定の理由」に該当する者
通常、退職者は「自己都合退職(一般離職者)」か「会社都合退職(特定受給資格者)」に分かれます。
しかし、一般離職者に分類されるはずの自己都合退職者の中には、その離職の理由によっては特定受給資格者や特定理由離職者に分類される場合があり、特定受給資格者・特定理由離職者に分類されれば、失業手当をすぐに受給することができます。
特定受給資格者や特定理由離職者へ分類するのはハローワークの仕事ですので、自己都合退職ですぐに失業手当がもらいたい人はハローワークに申請して特定受給資格者・特定理由離職者に認定してもらう必要があるわけです。
一般離職者と特定受給資格者・特定理由離職者の失業手当の違い
一般離職者と特定受給資格者・特定理由離職者の失業手当の違いは、下表の通りです。
| 一般離職者(自己都合退職者) | 特定受給資格者(会社都合退職者)・特定理由離職者 | |
|---|---|---|
| 待機期間 | 7日 | |
| 給付制限期間 | 1ヵ月 | なし |
| 給付日数 | 90~150日 | 90~330日 |
一般離職者も特定受給資格者・特定理由離職者も、ハローワークで失業手当を申し込むと「7日間の待機期間」があります。
この後、特定受給資格者と特定理由退職者はすぐに失業手当が支給されるのですが、一般離職者は「給付制限期間」がある為、1か月経たないと失業手当がもらえません。
また給付日数も、特定受給資格者と特定理由退職者は最大で330日ですが、一般離職者は最長でも150日です。
このように特定受給資格者・特定理由離職者に分類されることで給付時期や給付日数が大きく変わるわけです。
特定受給資格者・特定理由退職者の条件
前述の通り「特定受給資格者・特定理由離職者」への分類は、自分で決められるものではなくハローワークが決定します。
以下に特定受給資格者と特定理由退職者の条件を紹介しますので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
特定受給資格者の条件
特定受給資格者とは「会社都合退職者、および自己都合退職者のうち『特定の理由』に該当する者」を指しますが、ハローワークが定める特定受給資格者の条件は、以下のようになっています。
Ⅰ. 倒産等による退職者
- 会社の倒産(破産・民事再生・会社更生などの倒産手続きの申立てや手形の停止)による離職
- 大量リストラによる離職
- 会社の廃止・事業停止・解散による離職
- 事業所の移転に伴う通勤困難による離職
Ⅱ. 解雇等による退職者
- 会社による解雇(「自己の責めに帰すべき重大な理由」による解雇は除く)による離職
- 労働契約の締結時に明示された労働条件が事実と著しく異なっていたことによる離職
- 2ヵ月以上3分の1以上、または離職の直前6ヵ月の間のうち3月の賃金(退職手当を除く)の不払いがあったことによる離職
- 労働者の予見できない事由で15%以上賃金がカットされたことによる離職
- 離職の直前6ヵ月のうち3月連続して45時間、1月で100時間または2~6月平均で月80時間を超える残業があったため、行政機関から危険を指摘されたにも関わらず、会社が必要な措置を講じなかったことによる離職
- 会社が職種転換・配置転換の際に必要な配慮をしてくれなかったことによる離職
- 期間の定めのある労働契約が更新され、雇用時点から継続して3年以上雇用されている場合、かつ契約更新を希望していたにも関わらず、契約更新がされなかったことによる離職
- 期間の定めのある労働契約の締結に際し、契約更新が明示された場合において、契約更新されなかった(1つ前の項目に該当する場合を除く)ことによる離職
- いわゆる「ハラスメント」があったことによる離職
- 会社から直接・間接に退職を迫られた(早期退職優遇制度に応募した場合は該当しない)ことによる離職
- 会社のせいでの休業が3ヵ月以上になったことによる離職
- 会社の業務が法令に違反したことによる離職
少し難しい内容ですので、特定受給資格者に該当する場合を簡単にまとめてみましょう。
倒産や解雇による退職者
会社の倒産や解雇での退職者は特定受給資格者になります。イメージのしやすい「会社都合退職者」にあたり失業手当は7日の待機期間後すぐに支給されます。
やむを得ない理由での退職者
特定受給資格者の中には倒産や解雇だけでなく、以下のような「やむを得ない理由で離職してしまった人」も含まれています。
- 大量リストラによる離職(Ⅰの②)
- 事業所の移転に伴う通勤困難による離職(Ⅰの④)
- 労働契約の締結時に明示された労働条件が事実と著しく異なっていたことによる離職(Ⅱの②)
- 賃金不払いによる離職(Ⅱの④)
- 長時間労働による離職(Ⅱの⑤)
- ハラスメントによる離職(Ⅱの⑨)
採用の際に提示された労働条件と実際が異なっていて「話が違う」と退職する場合やパワハラやセクハラが原因で逃げるように退職をした場合は、自己都合退職者であっても特定受給資格者となります。
このような退職に至った直接的な原因が事業主の側にある自己都合退職の場合、ハローワークでの手続き時に申請して特定受給資格者に認定されれば、失業手当がすぐに支給されます。
特定理由離職者の条件
特定理由離職者とは「一般離職者(自己都合退職者)のうち、離職理由が『特定の理由』に該当する者」を指します。
具体的には、ハローワークが定める「特定理由離職者」の条件は以下のようになっています。
- 雇用契約期間満了に伴い、更新を希望したにも関わらず更新されなかった退職者
- 退職勧奨を受けて応じた退職者
- 以下のような正当な理由があって自己退職をした者
正当な理由のある自己退職
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険の受給期間延長措置を受けた
- 父もしくは母の死亡、疾病、負傷、扶養、または常時看護の必要な親族の疾病、負傷
- 配偶者や扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難
- 結婚・育児・事業所の移転・運輸機関の廃止・転勤や出向による別居の回避などの理由により通勤が不可能・困難
特定理由離職者とは、簡単にいえば「特定受給資格者のように会社の一方的な都合で解雇された(あるいは離職に追い込まれた)わけではないが、離職の理由を考えると正当性があり保護が必要な退職者」ということになります。
特定理由離職者の要件に当てはまる場合は、自己都合退職であってもハローワークへ申告して「特定理由離職者」と認められれば、給付制限期間がなくなり失業手当がすぐに受給できます。
特定受給資格者・特定理由離職者に認定されるには
自己都合退職者が特定受給資格者や特定理由離職者(特に特定理由離職者)として認められるかどうかは、あくまでもハローワークの判断次第です。
ここからは、特定受給資格者・特定理由退職者に認定されるにはどうしたらよいのか?について触れていきます。
客観的な証拠を集める
特定受給資格者・特定理由退職者に認定されるためには、それぞれの理由に該当することを示す客観的な証拠、つまり誰から見てもその理由が明らかにわかる証拠をハローワークに提出する必要があります。
具体的な証拠については、例えば
- 特定受給資格者の「事業所の移転に伴う通勤困難による離職」の場合であれば「事業所移転の通知、事業所の移転先が分かる資料および離職者の通勤経路にかかる時刻表」
- 「労働契約の締結時に明示された労働条件が事実と著しく異なっていたことによる離職」であれば「採用条件および労働条件がわかる労働契約書や就業規則など」
- 「長時間労働による離職」なら「タイムカード、賃金台帳、給与明細書など」
のように理由によって異なってきます。
必要な証拠については、在職中でないと入手が困難なものもありますので、退職前にハローワークへ相談し、必要な証拠を入手するようにしましょう。
残業が多く退職したい人は
「1ヵ月で100時間」「連続する2ヵ月に平均80時間」「連続する3ヵ月に平均45時間」という残業基準を超えていれば、自己都合退職であっても「特定受給資格者」として認定される確率が高くなります。
残業が多く退職を考えているという場合は、直近の残業時間について調べて把握しましょう。
そして、上記の残業基準を超えている場合は自己都合退職でもすぐに失業手当がもらえる可能性が高いので、退職前にハローワークへ相談し、在職中にタイムカードなどきちんと証拠を収集しておきましょう。
精神的な負担で退職したい人は
職場の人間関係や環境などが原因で勤務を続けるのが難しいという場合は、条件が揃えば「特定理由離職者」に認定されることがあります。
まずは心療内科など医師の診断を受け、病気であれば診断書を発行してもらいます。そして、診断書が発行されたらハローワークで状況を話して相談してみてください。
なお、失業保険は働ける状態にあることが受給の条件となります。現在勤めている会社で働くことが精神的な負担になっている場合はハローワークへの相談で問題ありませんが、長期の療養が必要となる場合は健康保険の「傷病手当金」の受給を検討することになります。
まとめ
以上、自己都合退職者がすぐに失業手当を受給する方法として「特定受給資格者・特定理由離職者」について紹介した上で、これらの要件や認定されるために必要なことを中心に触れてきました。
原則として失業保険(雇用保険制度)は離職者の生活を守り、速やかな転職を応援するという趣旨で作られていますが、一方で事業主の不当な行為によって退職に追い込まれた離職者を保護する制度も含まれています。
自己都合退職にも関わらず退職後すぐに失業手当をもらいたい場合、自分の退職に至った経緯が特定受給資格者・特定理由離職者に該当する余地がないかをまず考えるようにしましょう。
その上で該当する場合は、特定受給資格者・特定理由退職者として認定を受けることができる可能性がありますので、ぜひハローワークに相談してみてください。

