「休職するべきか?もう退職してしまうべきか?」この問いに正解はありません。ただし、判断を誤ると後悔するパターンには共通点があります。
総務部長として11年間で数多くの休職・退職案件に対応してきた経験から、会社側が休職者をどう見ているか、そして判断を誤った人に多かった3つのパターンをご紹介し、迷っている方が判断しやすい考え方の整理をしてみます。
今まさに「休職か退職か」で迷っている方はぜひ最後までご一読いただき、判断材料にしてみてください。
休職と退職
最初に伝えたいことがあります。
休職も退職も労働者の権利で、本来、会社の許可を得る必要はありません。
休職は法律上定められた義務ではありませんが、労働者保護として会社には安全配慮義務が求められ、就業規則に休職の規定がある場合がほとんどです。一方、退職は憲法や民法に定められている権利で一定の条件(例:正社員は退職の申し出から2週間で退職できる)を満たせば、本人の意思のみで退職が可能です。
「休職なんて許さない」「休職するなら退職しろ」と言われても、それに従う必要はありません。休職と退職のどちらを選ぶかは、あなた自身が決めることです。
その前提の上で、判断の材料を整理します。
休職と退職の違い
メリット・デメリットの前に、まず休職と退職の根本的な違いについて押さえておきましょう。
| 休職 | 退職 | |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 継続される | 終了する |
| 給与 | 原則なし | なし |
| 社会保険 | 継続される | 終了する |
| 選択肢 | 復職・退職が選べる | 会社には戻れない |
| 従うルール | 就業規則 | 民法・労働基準法など |
「休職制度」は会社により異なる
休職と退職の大きな違いのひとつは、休職が「法律上の権利」ではなく「就業規則上の制度」だという点。
育児休業・介護休業は法律で定められた権利ですが、病気・メンタル不調による休職は法律上の規定がなく、会社の就業規則に定めがある場合のみ利用できます。つまり就業規則に休職制度がない会社では、休職を申し出ても認められない可能性があるため注意が必要です。
まず、自社の就業規則で「休職」の項目を確認することが最初のステップとなります。
最も重要な違いは「決断の不可逆性」
休職と退職とでは「元の状態に戻せるか(不可逆性)」が根本的に異なります。
休職であれば復職ができ、さらに退職も選べますが、退職を選べば、元の状態に戻ることは原則できません。
休職か退職かで迷うケースでは心身が消耗している状態にあることも多く、今ある状況を終わらせようとしがちですが、取り消せない決断(退職)をするのではなく、選択肢を残しておく(休職)ことが賢明です。
判断を誤った人の3つのパターン
過去11年間、対応してきた経験から、判断を誤ったと後悔していた方に多いパターンを3つ紹介します。
パターン1:消耗しきった状態で退職を決めた
心身が限界の状態で「もう無理だ」と退職を決め、後になって「休職してから判断すればよかった」と後悔するケースが一定数ありました。
精神的に追い詰められているときほど、判断力は低下します。「今すぐこの状況から逃げたい」という気持ちはよくわかるのですが、そのタイミングで「退職」という取り消せない決断をするのは、冷静な状態での判断とは異なる場合があります。
総務部長として長年見てきた中で「一度休職してから判断すればよかった」という声は少なくありませんでした。一方で「退職してよかった」という方もいましたが、精神的な負担で消耗しきった状態で決めた場合に限れば、退職を後悔している方が多い印象です。
パターン2:お金の不安があり休職を選ばなかった
「休職中の収入がなくなるのが怖い」という理由だけで休職を選ばず、そのまま働き続けて症状が悪化したケースもありました。
症状が悪化すると最悪の場合、長期に渡って仕事ができない状態になってしまう場合もあるので、早めに休養や治療をすることをおすすめします。
休職中は通常、給料の支給はありませんが、傷病手当金という制度を使えば、給料の約2/3(標準報酬月額の約3分の2)の金額を最長1年6ヶ月受給することができます。万一、休職中に回復せず退職となった場合も一定条件を満たせば、退職後も継続して支給されるため、お金の不安は解決できる可能性があります。
傷病手当金については以下のページが参考になります。

パターン3:「職場環境が変わるかもしれない」と休職を選び続けた
休職期間中に職場環境が改善されることを期待して休職を選んだものの、復職しても何も変わっていなかった——そして、そのまま再び体調を崩して再休職・退職というケースもありました。
休職は「職場環境を変える手段」ではなく、あくまで「自分が回復する時間」です。休職中に職場環境が自動的に改善されることは、ほとんどありませんので、過度な期待はしないようにしましょう。
「休職しても同じ状況の繰り返しだった」と言って辞めていく方を何人も見てきました。上司が原因だったり、職場の状況が原因というような場合、休職期間中に原因そのものが取り除かれることは稀です。休職を選択する際は「休職から戻るまでの期間で職場の原因が取り除かれそうか」について、現実的に考えておくことも必要です。
会社側は休職者をどう見ている?
休職の申請を考える際に「会社は自分をどう見ているのか」が気になる人も多いと思います。そこで会社の立場から「休職者をどう見ているのか」について触れておきましょう。
「休職=迷惑」ではない
休職を申し出るとき「会社に迷惑をかけてしまう」という罪悪感を持つ方が多いのですが、総務の実務上では、休職対応は「想定内の業務」です。就業規則に休職制度がある以上、会社は休職者が出ることを前提に運営しています。
会社に迷惑をかけるなどと思う必要はありません。あなたが休んでいる間、会社は何らかの形で業務を回します。それが会社の仕事ですので安心して休職を申し出てください。
会社が本当に困るのは「突然の退職」
会社(総務)の立場から正直に言うと、会社が最も対応に困るのは「事前の相談なしに突然退職する」ケースです。休職の申し出は、状況を把握して準備することができますが、突然の退職の場合は引き継ぎの時間すら取れません。
「休職を申し出ることで会社に迷惑をかける」という心配より、休職を選ばず、我慢の限界となって「相談なく突然退職してしまう」ほうが会社へ与える影響は大きいです。
もし「休職するなら退職しろ」と言われたら
休職制度のある会社で「休職するなら退職しろ」と言われても、従う必要はありません。
正当な理由のない退職勧奨は、違法の可能性大。もし、会社から「休職に入らず退職」と言われたら、一人で抱え込まず労働基準監督署へ相談してみてください。
休職・退職の選び方
ここまで休職と退職について見てきましたが、休職すべきか退職すべきかで悩んでいる方も多いと思います。そこで、休職・退職の選び方についてご紹介してみます。
休職か退職かの判断チェックリスト
まずは、休職か退職かで悩んだ場合、判断するためにチェックすべき項目を見ておきましょう。
休職を選ぶべきチェック項目
- 今の体調・メンタルの状態で、冷静な判断ができるか自信がない
- 今の会社の待遇・条件は悪くなく、体調だけが問題だ
- 退職後の転職・収入の見通しがまだ立っていない
- 傷病手当金の受給条件を満たしている
退職を選ぶべきチェック項目
- 休職しても、また再発を繰り返すイメージしか持てない
- 上司や職場環境が原因で、異動や改善の見込みがない
- すでに転職先の見通しがある、または転職活動ができる状態
- 今の会社で働き続けることに意味を感じられない
休職・退職どちらのチェックが多いかで判断の方向性が確認できますが、最終的な判断は、主治医や信頼できる人と相談した上で行うことをおすすめします。
お金の見通しから整理してみる
判断に迷ったとき、今後のお金の見通しについて考えることで冷静になれることがあります。
| 休職の場合 | 退職の場合 | |
|---|---|---|
| 主な収入 | 傷病手当金(標準報酬月額の約2/3) | 失業保険(賃金日額の約50〜80%) |
| 受給期間 | 最長1年6ヶ月 | 90〜360日(加入期間・理由による) |
| 社会保険料 | 会社と折半 | 全額自己負担(国保・国民年金) |
一般的に、休職中のほうが退職後より月々の手取りは多くなる傾向がありますが、状況によって異なるため、傷病手当金の完全ガイド や 退職後のお金はいつ・いくら入るか の記事もあわせて確認しておくと良いでしょう。
まとめ:迷ったときは「休職を先に選ぶ」が原則
休職か退職かで迷っているなら、まず休職を選ぶことをお勧めします。理由はシンプルです。
- 休職は後から退職を選べるが、退職してしまったら元の会社には戻れない
- 消耗しきった状態での大きな決断は、後悔につながりやすい
- 休職中に少し回復してから判断するほうが、より冷静に選べる
休職をすすめる理由
ただし「職場環境が変わらないことが分かっている」「今の会社で働くことに意味を感じられない」という場合は、退職を選ぶのが正しい判断です。
休職・退職のどちらが正解かはあなたの状況によって異なりますが、衝動的に決めるのではなく、今後の生活も考えた上で選択するようにしましょう。
