傷病手当金の申請で損しないための完全ガイド

傷病手当金の申請で損しないための完全ガイド 給付金

この記事は「傷病手当金の制度解説」ではありません。

総務責任者として11年間、社員からの申請を会社側として手がけてきた経験から「申請する側がやりがちな損をするパターン」など傷病手当金の申請手続きを中心に実体験に基づいた情報を記載しています。

傷病手当金の申請で損しないためにぜひ最後までご一読ください。

【本記事は労働組合 私のユニオンの監修です】

傷病手当金とは?

傷病手当金は、業務外の病気やケガで働けなくなったときに健康保険から支給される手当です。

会社員・公務員などの健康保険に加入している人が対象で、自営業や個人事業主などが対象となる国民健康保険の加入者は対象外で受給ができません。

傷病手当金の概要

内容
支給元
  • 加入している健康保険組合(協会けんぽなど)
支給額
  • 標準報酬日額の約2/3(日額)
支給期間
  • 支給開始日から通算1年6ヶ月
申請先
  • 加入している健康保険組合(会社経由または直接申請)

「傷病手当金をもらえるとは知らなかった」という退職者や休職者をこれまで何人も見てきましたが、傷病手当金制度を知っているだけで100万円を超える差が生まれます。

私傷病で働けなくなる場合は、まず「傷病手当金の申請」を検討するようにしましょう。

支給額〜計算式と早見表

傷病手当金の支給額は以下の計算で算出されます。

「1日あたりの支給額 = 直近12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3」

支給額 早見表

月の支給額は「給与の約67%」が目安となります。

月収 標準報酬月額 月の支給額
(目安)
20万円 20万円 133,333円
25万円 25万円 166,667円
30万円 30万円 200,000円
35万円 35万円 233,333円

4つの支給条件

  • 業務外の病気・ケガであること
  • 労務不能であること
  • 連続する3日間(待機期間)を含み4日以上仕事に就けない状態であること
  • 休業中で給与の支給がないこと

労務不能とは?
病気で入院している、医師から自宅療養の指示が出ているなどが労務不能に該当します。申請の際に医師の意見が必要となり、医学的に本来の仕事(これまで従事していた業務)が困難と判断されることが必要です。

業務を軽減して勤務を続け、通常の給与が支給されている場合は「労務不能」とはなりませんが、本来の仕事とは異なる副業などで一時的な収入を得ている場合は「労務不能」となります。

傷病手当金の待機期間

傷病手当金を受給する場合「待機期間」があります。下図のように連続する3日間の休業(待機期間)が成立すると、4日目の休業から傷病手当金の受給が可能となります。

傷病手当金 待機期間

なお、待機期間中には傷病手当金は支給されないので注意が必要です。

 

傷病手当金の申請手続き

ではここから、他のサイトにはない「担当してきた側の視点」で傷病手当金について損しない申請方法をご紹介します。

待機期間は有給消化

傷病手当金の申請期間で有給消化のタイミングを間違うと損するので注意が必要です。

傷病手当金を申請する場合、よく「残っている有給は後に取っておいて、まず傷病手当金を申請したい」と希望する人がいますが、待機期間となる最初の3日間は有給を消化してください。

その理由は、待機期間中の手当は支給されないから。

有給消化すれば、最初の3日間は通常通りの給与が支給されますが、有給消化をしない場合は下表のように給与も手当も3日間支給されないということになってしまいます。

日程 有給消化あり 有給消化なし
1日目
(待機期間)

有給
×
無給
2日目
(待機期間)

有給
×
無給
3日目
(待機期間)

有給
×
無給
4日目以降
傷病手当金

傷病手当金

有給を後に取っておきたいという心理はわかるのですが、休業する最初の連続する3日間は有給を消化するようにしておきましょう。

退職予定の場合は?
今後退職するつもりであれば、有給を残しておく必要はありませんので、傷病手当金の申請期間の最初から有給を消化し、有給を使い切ってから傷病手当金を受給するのがベストです。

申請手続きのポイント

傷病手当金の申請書は大きく3つの用紙に分けられます。

ページ 記入者 内容
被保険者 用片 本人 氏名・住所・休業期間・振込口座など
事業主 用片 会社 休業期間・給与支払い状況の証明
療養担当 用片 主治医 労務不能期間の証明

ミスしやすいポイント

これまで総務責任者として傷病手当金の申請を手がけてきた経験から、差し戻しになりやすいケースをご紹介しておきましょう。

1. 休業期間の記入ミス

休業期間が誤っていると申請は通りません。自分が休業を開始した日をしっかり確認して申請書に記載してください。もし申請書の書き方で不明点があれば、会社の総務担当者や加入している健康保険組合(協会けんぽの場合は加入している支部)へ電話で確認しましょう。

2. 振込口座情報の記入ミス

振込口座は自分自身の口座を設定しますが、口座番号の間違い・口座名義の記載ミスが多い印象があります。通帳やキャッシュカードを見ながら記入し、提出前にもう一度確認することをお勧めします。

3. 医師の証明欄の「労務不能期間」が、本人が申告する休業期間と異なる

医師に証明してもらう期間と、実際に休んだ期間がずれていると申請は通りません。主治医への依頼時に「〇月〇日から〇月〇日まで休んだので、その期間の労務不能であることを証明してほしい」とはっきり伝えるようにしてください。

「飛び石出勤」はできれば避ける
連続した3日間(待期期間)をクリアすればその後出勤したり、休んだりしても傷病手当金は支給されます。ただこういった「飛び石出勤」の場合は休業期間の不一致が起こりがちですので、出勤したり休んだりせず、療養に専念することをおすすめします。

申請書の入手方法

加入している健康保険組合ごとに申請書の様式が異なります。

  • 協会けんぽの場合:全国健康保険協会ホームページからダウンロード(最新様式:令和5年1月改定版)
  • その他の健康保険組合の場合:健康保険組合ごとに独自の書式がありますので、健保組合のホームページや会社の総務担当者に確認するようにしましょう。

退職後も傷病手当金は受給できる?

「退職したら受給できなくなる」と思っている方が非常に多いですが、条件を満たせば退職後でも受給を継続できます

退職後も受給できる2つの条件

条件1:退職前に継続して健康保険に1年以上加入している

転職などで健康保険の種類が変わっても、空白期間がなく、加入期間が途切れていなければカウントされます。

条件2:退職日に傷病手当金の受給条件を満たしている

退職後に新たに病気になった場合は対象外です。退職後も継続して以下の受給条件を満たしていることが必要です。

  • 在職中から同じ病気・ケガで労務不能の状態が続いている
  • 在職中に医師の診察を受け、待機期間(3日間)が成立している
  • 退職日も出勤していない
  • 退職後に他の会社の社会保険に加入していない

申請の流れ

私傷病による休職で傷病手当金の申請を行う際の流れは以下の通りとなります。

  • 1医療機関の受診
    まずは医療機関の受診をし、労務不能(一定期間の療養が必要)との診断を受けます。休職に入る場合は療養期間等が記載された診断書が必要になる場合がほとんどです。会社によっては休職に入るにあたり必要な診断書の書式がある場合もありますので、会社の担当者へ確認してみると良いでしょう。
  • 2休職の申請と休職開始
    診断書が用意できたら会社へ提出して休職の申請を行い、休職を開始します。あわせて会社へ傷病手当金を申請する旨を伝え、申請書を用意します。
  • 3療養担当(医師)の証明を受ける
    傷病手当金の申請は通常約1か月ごとに行います。休職開始から約1か月経つ頃に、医療機関の受診し、申請書へ療養担当(医師)の証明を受けてください。
  • 4会社へ申請書を提出
    申請書に必要事項(氏名・マイナンバーや受給用の銀行口座など)を記載し、申請書一式を会社へ提出します。
  • 5会社にて申請
    会社は申請書を受け取ったら、勤務の証明を行なった後に健康保険組合へ申請を行います。
  • 6傷病手当金の受給
    健康保険組合で申請内容を確認し、問題なければ傷病手当金が支給されます。支給までの期間は健康保険組合によって異なりますが、協会けんぽの場合は申請書が届いてから概ね10日程度で支給となります。

傷病手当金を受給する際の生活設計

傷病手当金を受給する際、休業期間中は通常、会社からの給与は無給となります。

無給の場合、給与から天引きで控除されているものの内、所得税・雇用保険料についてはかかりませんが、住民税は市町村から届く納付書で直接収めることになります。また、社会保険料は会社からの請求で支払う必要があります。

傷病手当金を受給することで、働かなくても給与の約2/3の金額が収入として入ってきますが、休業前と同額の住民税・社会保険料が出費として出ていきます。生活設計をする上で家計として成り立つかどうかについて事前に計算しておくようにしてください。

まとめ:編集長が伝えたい「一番大事なこと」

11年間、傷病手当金の申請に携わってきた経験から、最後に一番大事なことをお伝えします。

傷病手当金を申請しないと損をする」という事実を、会社は教えてくれません。

制度の存在は就業規則や社内規定のどこかに書いてあっても「あなたは今、傷病手当金を受け取る権利があります。こうすれば損をしません」と丁寧に教えてくれる会社はほぼありません。

傷病手当金の申請は本人の申告ベース。まずは、あなたの今の状況を確認し、申請条件を満たしている確認してみましょう。もし使えるかどうか分からない場合は、健康保険組合の窓口に電話相談すると丁寧に教えてくれます。

その上で使えるようであれば、会社へ「傷病手当金を使いたい」と伝えてください。

もしあなたが今、病気やケガで休職や退職しようとお考えであれば「傷病手当金」を活用して生活再建していただければと思います。

記事の著者情報

まいサポ編集長

総務部長として11年間にわたり退職手続き・休職対応・就業規則の設計などを実務で担当。制度を作る側・処理する側にいた経験をもとに、働く人にとって本当に役立つ情報を執筆しています

この記事の監修について
監修
合同労働組合 私のユニオン
労働問題の専門家集団として記事内容の正確性・適法性を確認しています
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