退職代行を使われたとき、会社側はこう動く

退職代行を使われたとき、会社側はこう動く 退職・退職代行

退職代行を使うとき、会社側がどう動くかを知っておくと、余計な不安が消えます。

このページでは、総務責任者として11年間・複数件の退職代行に対応してきた経験をもとに、退職代行を使われた会社側の実務や退職者へ向けたアドバイスを公開しています。

「退職代行を使ったら転職先への影響はあるのか」「訴えられることがあるのか」「退職後の書類は届くのか」といった退職者が抱える不安について、会社側の視点を交えてお伝えします。ぜひ最後までご一読ください。

【本記事は労働組合 私のユニオンの監修です】

退職代行の連絡が来た時、会社がすること

退職代行サービスからの連絡は、ある日突然やってきます。

多くの場合、朝の始業前後に電話で「〇〇さんの退職意思を代行してお伝えします」という形で入ってきます。

最初にやることは1つだけ

退職代行からの連絡を受けた瞬間に総務がすることは、退職手続きのチェックリストを開くことです。

感情は後回し。連絡を受けた直後に感情のまま動くと、対応を誤ってしまいます。

驚き・怒り・戸惑い・「なぜ?」という疑問。それらはすべて、初期対応が終わってから考えることです。

    退職代行の連絡を受けた直後に会社がやること
  1. 退職代行業者の社名・連絡先・担当者名を記録する
  2. 「折り返し連絡する」と伝えてその場での判断を避ける
  3. 上長・人事責任者に報告する
  4. 退職手続きのフローを確認する

その場でしてはいけないこと
「退職を拒否する・本人に直接連絡しようとする・感情的な言葉を代行業者に伝える」これらはすべてトラブルの原因になります。退職は法律で守られた従業員の権利で、代行サービスの利用を理由に会社は拒否してはいけません。

会社が確認する3つのこと

折り返し連絡をする前に、状況を把握するために、以下の3点を確認します。

① 退職代行業者の種類を確認

退職代行は運営者別に3種類ありますが、その種類によって会社側の対応が変わります。

運営者 できること 会社の対応
民間企業 退職意思の伝達のみ 本人確認後に退職の受理・手続きを対応。退職日設定・有給消化などの交渉に応じる義務はない
弁護士 退職に関する調整・交渉全般 退職内容を慎重に確認。顧問弁護士がいれば弁護士へ対応を相談する
労働組合 退職に関する調整・交渉全般 退職内容を確認した上で法律の範囲内で対応する

会社が対応する際の要注意は、労働組合が運営する退職代行となります。

労働組合の退職代行は数は少ないですが、労働組合法に基づく交渉権を持つため、退職日設定や有給消化の申請などの要求が可能です。

民間企業と同等の扱いをして交渉を拒否すると違法となるので、会社側としては粛々と対応するのが正解です。

② 本人の意思確認

退職代行からの連絡が本当に本人の意思によるものかを確認する必要があります。

運営者 会社の対応
民間企業 法的に本人の代わりになることはできない為、本人へ連絡を取ることができます
弁護士 本人の代わりとなって交渉ができる為、本人への確認はすべきではありません
労働組合 本人の代わりとなって交渉ができる為、本人への確認はすべきではありません

民間企業の退職代行の場合は、本人へ連絡を取っても問題にはなりませんが、ハラスメントとみなされる可能性もあるので、本人への直接連絡は避けるのが良いでしょう。

本人確認は、退職代行業者に「本人から直接委任を受けているか」について委任状などを確認する形で行います。

③ 雇用形態の確認

雇用形態(無期雇用・無期雇用)によって法律による退職条件が異なるため、退職代行へ折り返しの連絡を入れる前に事前確認を行う必要があります。

無期雇用

無期雇用(正社員など期間の定めのない雇用契約)の場合、退職の申し出から2週間で法律上退職が成立します。

民法第627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

たとえ自社の就業規則に「〇か月前申告」と書いてあっても、法律(2週間後の退職)が優先されます。

有期雇用

有期雇用(契約社員など)の場合、原則として契約期間中の一方的に退職することはできませんが、1年以上勤務している場合やハラスメント・雇用契約の不一致・体調不良など「やむを得ない理由」がある場合の退職は認められています

民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。

転職理由での退職は拒否することもできますが、やむを得ない理由がある場合は、争わず退職を受理するのが良いでしょう。

退職代行への対応フロー(会社の実務)

初動の確認が済んだあと、会社側(総務や人事)の対応手順は以下の通りとなります。

  • 1退職代行業者に折り返し連絡する
    本人確認・退職希望日・有給消化・貸与品の返却・要望内容を確認します。感情的なやり取りはせず、事務的に情報を収集することだけに集中します。
  • 2退職日・有給消化の取り扱いを決定する
    有給残日数を確認し、有給消化申請がある場合は原則として認める必要があります。有給消化を認めないことは違法で、労働基準監督署の是正を受ける可能性があります。退職日は退職者の希望を考慮し、原則退職の申し出から2週間以降で設定します。
  • 3退職届の受取・退職手続き・必要書類の準備
    退職届は郵送で本人より受け取ります。会社所定の様式がある場合は本人へ郵送します。同時に、最終給与の支給・社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失手続き・離職票・源泉徴収票の発行準備を進めます。
  • 4貸与品の返却・私物の返送
    社員証・PC・スマートフォン・制服等の貸与品は、郵送で返却してもらいます。制服はクリーニング後の返却を求めても問題はありません。私物が社内に残っている場合は、着払いで送付し、本人に直接取りに来るよう求めることは避けます。
  • 5必要書類の発行・送付
    退職日後に、離職票・源泉徴収票・健康保険資格喪失証明書を本人の住所に郵送します。これらは退職者の健康保険の切り替えや失業保険申請に必要な書類です。速やかに発行・送付する必要があります。

会社が教える「退職代行利用者へのアドバイス」

ここまで退職代行に対する会社側の実務についてご紹介してきましたが、ここからは実務責任者から送る「退職者へのアドバイス」についてお伝えしていきます。

事前に準備しておくことは?

まずは、会社側の実務を担当している立場から見て、退職代行を使う人が準備しておくといいことについてお伝えします。

退職時に会社へ請求する書類を把握しておこう

退職後にはいくつか手続きが必要です。具体的には「健康保険の切り替え」や「失業保険の受給」手続きがあり、転職時の提出書類を含め、通常は以下の書類を請求します。

退職時の請求書類 一覧
書類名 用途・内容
離職票(1・2) 失業保険の受給申請時に必要な公的書類。通常、退職日から2週間程度で会社から郵送されます
健康保険資格喪失証明書 国民健康保険へ切り替える際に必要な会社発行の書類。通常、退職日から2週間程度で会社から郵送されます
退職証明書 会社が発行する退職を証明する万能な書類。通常、退職日から1〜2週間程度で会社から郵送されます
源泉徴収票 年末調整・確定申告に必要な書類で転職すると提出を求められます。通常、最終の給与支給日から2週間程度で会社から郵送されます

貸与品の返却は忘れずに

社員証・PC・スマートフォン・鍵・制服・社章など会社から渡されている貸与品は返却義務があります。

退職代行を利用する際は郵送での返却が一般的で、制服やユニフォームはクリーニング後の返却となる場合が多いと思います。

貸与品の未返却や破損は後々会社とのトラブルになる可能性がありますので、返送する物や郵送方法などは、退職代行業者の指示通り漏れのないよう確実に行いましょう。

有給休暇は消化できる

退職時の有給消化申請は、法律上の正当な権利行使で、会社は拒否できません。

退職代行を利用しても有給消化できますが、その際は交渉可能な退職代行(弁護士または労働組合の退職代行)を利用するようにしましょう。

また有給消化するのであれば、確実に消化できるように、有給残日数を給与明細や社内システムで事前に確認しておくことをおすすめします。

退職代行を使うと転職に影響する?

次に、心配される人も多いと思いますが「退職代行を使ったら転職に影響するのか」という点について、会社側からの真実をお伝えします。

転職先への影響は?

結論から言うと、退職代行を使うことで転職に影響することはありません

以前は、中途採用の際に前職企業へ直接問い合わせをする「前職調査」を行う企業もありましたが、現在は個人情報保護法の施行により、本人の同意なく個人情報を第三者に提供することが禁止されている為、前職調査は行われていません。

よほど狭い地域や業界での転職でもない限り、退職代行を利用したことが転職先に漏れることはありません。

法的なリスクは?

退職代行を使うこと自体は合法ですので、損害賠償等の法的リスクは原則ありません

引き継ぎ放棄による損害賠償の請求は条件が整えば理論上可能ですが、会社側が「退職によって具体的な損害が生じた」ことを立証するのは非常に難しく、実際に請求されるケースはないと言っていいでしょう。

編集長より一言
心身の疲弊から退職代行を検討している人も多いと思います。そんな時は、退職代行を使う前に一度立ち止まって「休職という選択肢」も検討してみることをおすすめします。

当サイト「まいサポ」では「休職」や「退職代行」についての記事も用意していますので「退職後に失業保険を受給」あるいは「休職に入って傷病手当金を受給」のどちらが再建につながるのか、についてよく考えた上で、自分に合った選択をしていただければと思います。

まとめ

退職代行を使われた会社(総務や人事の担当者)は、感情より手続きを優先して動きます。

退職は働く人の権利ですので、常識的な会社であれば、退職代行を使ったからといって退職を拒否するようなことはありません。あなたが退職代行を使って辞めたとしても、会社側に大きな混乱はありませんし、あなたの転職先へ影響が出るような行動もとりません。

もし退職代行を使うことに後ろめたさや不安を感じているのであれば、少し気持ちを楽にして新しい第一歩を踏み出してください。

記事の著者情報

まいサポ編集長

総務部長として11年間にわたり退職手続き・休職対応・就業規則の設計などを実務で担当。制度を作る側・処理する側にいた経験をもとに、働く人にとって本当に役立つ情報を執筆しています

この記事の監修について
監修
合同労働組合 私のユニオン
労働問題の専門家集団として記事内容の正確性・適法性を確認しています
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