「休職したい」と思っても、上司への切り出し方が分からず、限界まで働き続けてしまう方が少なくありません。
この記事では、11年間実務に携わってきた元総務部長が、受け取る側の視点から「伝えると動きやすい言葉」「診断書の正しい取り方」「休職が通りやすいタイミング」などを解説します。
休職を切り出す際の一言の違いでその後の手続きをスムーズになりますので、ぜひ参考にしてください。
休職を申請する前に知っておくこと
「休職を申請するか」で悩んでいる人のほとんどは「どう休職を伝えれば拒否されないか」を考えているように感じます。
休職の切り出し方についてお伝えする前に、まずは休職申請する前に知っておくべきことについてご紹介します。
休職するなら「就業規則」をチェック
休職制度は法律で義務づけられているわけではありません。
就業規則に記載されている会社しか休職制度は存在しませんので、休職したい場合は、まず自社の就業規則で「休職」の項目を確認することが必要です。
なお休職制度がない場合、あるいは休職制度はあっても利用対象にならない場合は、有給休暇の消化・欠勤扱い(有給がない場合)・自主退職のいずれかを選択することになります。
就業規則を「会社に行って確認する」のが難しい状態であれば、入社時に配布された就業規則のコピーや、会社のイントラネット・共有フォルダを確認しましょう。それも難しい場合は、総務や上司へ「就業規則を確認したいので送っていただけますか?」と伝えれば、会社は拒否できません。
労働基準法 第106条
就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
病気やケガで休職を考え始めたら、まずは就業規則で「会社の休職制度があるのか」「自分は休職制度が使えるのか」について確認するようにしましょう。
休職するなら「診断書」は必須
会社に休職制度があり、自分が利用条件を満たしていたとしても「休職を申し出たら拒否されるかもしれない」と不安を感じている人も多くいるでしょう。
しかし医師が「労務不能」と記した診断書がある場合、安全配慮義務により、会社は休職を拒否することが原則できません。
上司が「今は忙しいから待ってほしい」「もう少し頑張れないか」と言うことさえ、会社側の法的リスクに変わります。
逆に診断書がない状態で「体調が悪いから休職したい」と会社に伝えても、対応してもらうのは難しいでしょう。
診断書は「あなたを守る最も強力なカード」であるということを覚えておいてください。
診断書の取り方〜医師への伝え方と注意点
休職を希望する場合、まずは診断書を取るところから始めてください。医師が療養を必要と判断した診断書があれば、会社側は動きやすくなります。
どの医療機関を受診するか
- 身体的な疾患やケガ:該当する診療科
- メンタル系の不調(うつ・適応障害・不安障害など):心療内科または精神科
最近はオンライン診療でも診断書の発行が可能な医療機関が増えています。心療内科または精神科は非常に混み合っていることが多く、会社に行けない状態でも受診できますので、メンタルの不調であればオンライン診療を使うのもおすすめです。
医師への伝え方
「診断書が欲しいから受診する」ではなく「今の状態を正直に話す」ことを心がけましょう。
以下の内容について事前に整理してから受診することで、医師が状況を理解しやすくなります。
- いつ頃から症状が出始めたか
- どんな症状があるか(眠れない・食欲がない・涙が出る・体が動かない など)
- 症状が出るのは仕事の日だけか、休日も続くか
- 職場でのストレスの原因(人間関係・業務量・ハラスメント など)
受診前に整理しておくこと
はっきり伝えて大丈夫です。「医師に言うと迷惑では」と遠慮する方がいますが、休職の判断は医師の職務の範囲内です。「仕事を休んで治療に専念する必要があるか、先生のご意見を聞かせてください」という伝え方が自然です。
診断書に書いてもらう内容
診断書には通常、病名・休職が必要な期間・就労不能である旨が記載されます。
医師に会社に提出する診断書である旨を伝えて、以下の内容が含まれているか、必ず確認してください。
- 病名(傷病名)
- 「〇週間〜〇ヶ月(または〇月〇日まで)の休養を要する」という記載
- 「就労不能」または「労務不能」の記載
- 医師の署名・日付・医療機関の印
休職を受理する総務側としては「就労不能期間が明記されている診断書」が必要となります。「要休養」だけでは休職期間の設定ができず、再提出が必要になる場合も。受診時に「会社に提出する診断書なので、休職期間を明記していただけますか」と医師に伝えておくと良いでしょう。
休職の切り出し方
総務責任者として11年間休職に携わった経験から「この伝え方だと手続きがスムーズに進む」パターンをお伝えします。
基本の伝え方(必要な3つの要素)
休職を切り出す際に伝えるべき内容は、以下の3つだけ。余計な説明は不要です。
- 状態:体調が優れず、医療機関を受診したこと
- 診断:医師から休職が必要と診断されたこと
- 意向:休職の手続きを進めたいこと
以上の3点を上司や管理部門の担当者へ伝えれば大丈夫です。
具体的な伝え方〜例文
「突然のご連絡で申し訳ありません。体調不良が続き、先日医療機関を受診したところ、しばらく休養が必要との診断を受けました。診断書もいただいていますので、休職の手続きについてご相談させていただけますでしょうか。」
件名:休職のご相談について
お疲れ様です。〇〇です。
体調不良が続いており、先日心療内科を受診いたしました。医師より休養が必要との診断を受け、診断書をいただいております。
休職の手続きについてご相談したく、ご連絡いたしました。
ご都合のよいときにお時間をいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
切り出す際に言わなくても良いこと
| 言わなくても良いこと | 理由 |
|---|---|
| 病名の詳細 | 切り出すタイミングで「うつ病」「適応障害」など、具体的な病名を伝える必要はありません。「精神的な不調」「メンタルの疲弊」程度で十分です |
| 休職の原因 (職場への不満など) |
感情的なやり取りになりやすく、手続きの障害になることも。原因は後日で人事や労働組合に相談する機会があれば、その時にしましょう |
| 復帰の見通し | この段階で断言できないことを無理に伝えると、後で矛盾が生じることにもなりかねません。もし聞かれても「医師の判断に従います」で十分です |
休職を切り出す際、病名を先に言う必要はありません。
総務側として休職に対応するとき、まずは「診断書があること」「休職希望であること」の2点がわかれば大丈夫です。病名や病状は、後から診断書で確認します。
切り出すタイミングと相手
休職を切り出すときに悩むのは「切り出す相手」と「切り出すタイミング」でしょう。順番に説明していきます。
誰に伝える?
原則として直属の上司に最初に伝えますが、状況によっては以下のように対応すべき時もあります。
| 状況 | 伝える相手 |
|---|---|
| 直属の上司がストレスの原因 | 上司の上司・総務担当者・人事担当者・社内の相談窓口・産業医に直接相談しましょう。相談が難しい場合は「休職代行」を利用するのもおすすめです |
| 上司が不在・連絡が取れない | 上司の上司・総務担当者・人事担当者に直接連絡しましょう |
| 体調により直接連絡が難しい | 体調により直接または電話連絡が難しい旨を最初に一言添えた上で、上司にメール・LINEで連絡しましょう。連絡が難しい場合は「休職代行」を検討してください |
いつ切り出す?
「もう少し落ち着いてから言おう」と先延ばしにする人も多いですが、体に症状が出ている状態であれば無理せず、医師の診断がおりたら速やかに伝えるようにしてください。
「月末・期末など繁忙期の真っただ中」は切り出すタイミングとして避けた方がいいのでは?と考えがちですが、自分の体調が第一です。また、診断書が出ている状態であれば、会社側も「タイミングが悪い」という理由で拒否することはできません。
特にメンタルが原因となる傷病の場合、我慢を続けると症状が悪化して回復に時間がかかります。早期療養・早期回復が基本ですので、まず医療機関で診断書を取得したら、休職に入ることを最優先にしてください。
引き止められたときの対処法
休職を切り出したときに、上司から引き止めの言葉が出ることがありますが、代表的なパターンと対処法についてご紹介しておきます。
| 引き止めパターン | 対処法 |
|---|---|
| 「もう少し猶予がほしい」 | 「医師の指示がありますので、まず手続きを進めさせてください」と伝え、診断書を提示する |
| 「今は繁忙期だから困る」 | 「体調の問題ですので、時期は選べない状態です」と伝える |
| 「もう少し頑張れないか」 | 「医師が休養が必要と判断しております」と繰り返す。感情的に応じるのはNG |
| 「休職はキャリアに影響する」 | 「まず体を治すことが優先と考えています」と伝える |
引き止めをする上司の多くは、悪意があるわけではなく「業務をどうするか」という焦りから動いています。感情的に応じると話がこじれますので注意してください。
返答に困ったときは「医師の判断ですので」という一言を繰り返すだけで十分です。診断書がある状態では、最終的に会社側が従うしかありません。
上司や会社の引き止めが厳しく対応が難しい場合は、労働組合や弁護士が行なっている「休職代行」に依頼するのが良いでしょう。第三者が間に入ることで、話がスムーズに進みます。
切り出した後の流れ
休職の意思を伝えた後、会社側と進める手続きの流れを確認しておきましょう。
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- 1診断書を会社(上司または総務・人事)に提出する
- 診断書は郵送でも可能です。その際は「○月○日付けの診断書を送付します」と電話やメールで事前に連絡してから、レターパックライトで郵送すると確実です
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- 2休職開始日・期間を会社と調整する
- 原則、診断書に記載された療養期間が休職期間となります。休職期間が延びる場合は再度、診断書を取得する必要があります
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- 3傷病手当金の申請を検討する
- 休職期間中は就業規則に特段の定めがない限り給与の支払いはありません。残っている有給を消化するか、給与の約2/3が最長1年6ヶ月支給される「傷病手当金」を申請するか、となります。傷病手当金を利用する際は会社経由で申請を行いますが、詳しくは当サイトの傷病手当金の記事をご覧ください
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- 4休職中の連絡方法を調整する
- 「休職中の連絡はメールのみ」など、会社との取り決めを事前に確認しておきます。休職中に頻繁に連絡が来る場合は、窓口を人事担当者1名に絞るよう依頼できます。
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- 5引き継ぎは「できる範囲」で
- 体調が悪い状態での引き継ぎは義務ではありません。完璧な引き継ぎをしようと考えず「引き継ぎメモだけ作る」「担当案件のリストを渡す」程度でも十分です
【参考】引き継ぎメモの内容は?
以下のような項目をA4用紙1〜2枚程度にまとめてメールなどで送れば十分です。
- 自分が担当している業務の一覧と基本的な進め方
- 取引先・連絡先の一覧
- 進行中のタスク・懸案事項
- データや書類の保存場所
引き継ぎは必須ではありません。体調と相談し、できる範囲で対応しましょう。
まとめ
今回は休職の会社への切り出し方を中心にご紹介してきました。
休職について会社へ伝えることは勇気のいることです。
「休職を伝えたら会社に拒否されるのではないか」と心配している人もいらっしゃると思いますが、会社には安全配慮義務があり、休職を拒否することは原則できませんので、安心して休職を伝えてください。
最後に休職を切り出す際に覚えておいてほしいことについて、要点を絞ってお伝えしておきます。
- 診断書があれば、会社は休職を拒否できない
休職する際は診断書が必要です。まず医療機関を受診して診断書を取ることを最優先にしてください。 - 伝えるのは3つだけ:受診した・診断が出た・休職したい
病名の詳細・給食の原因・復帰の見通しについては、この段階で言わなくて大丈夫です。休職を切り出す際に多くのことを伝える必要はありません。 - 早く休んだ人のほうが早く回復する
長年総務で休職者を見てきた事実です。「もう少し頑張ってから」という先延ばしが回復を遅らせることにつながりますので、医師の診断を受けたら速やかに休職の意思を会社へ伝えてください。

